はじめに
人間関係で困ること
職場や学校で困ること
日常生活で困ること
外出時に困ること
病院や役所で困ること
買い物や飲食店で困ること
交通機関で困ること
緊急時・防災・災害に関して困ること
趣味や娯楽で困ること
電話に関して困ること
補聴器に関して困ること
おわりに
はじめに
「難聴」とひとことで言っても、実際には人それぞれ、聞こえ方も困りごとも違います。
小さな音は聞こえるのに、人の声だけ聞き取りにくい。
補聴器をつけても言葉の輪郭がぼやける。
聞こえないことを周囲に言えず、わかったふりをしてしまう。
難聴を含めて聴覚障がいは、「見えない障がい」であり「人間関係の障がい」です。
見えないから、「なんで聞こえないの?」「なんで無視するの?」と誤解されることも多くあります。
ここでは、難聴のある人が直面しがちな「困りごと」を紹介します。
きっと当事者の方に共感いただけるのではないかと思います。
もしあなたの身近に「聞こえにくさを抱えた人」がいたら、このリストを通して少しでも理解を深めていただけたら嬉しいです。
「ちゃんと聞いていない」と思われそうで、自分から話題に入るのも怖くなり、つい黙ってしまうこともあります。
「もう何回も言ったでしょ」と言われたりして、責められているような気持ちになることもあります。
孤立感や疎外感を感じたり、1人だけ別のことを考えてしまうことが多くなります。
人から誤解され、悲しい思いをすることもあります。
「実は聞こえにくくて…」と説明する勇気が持てない場合も多く、会話自体が億劫になったり、孤立感を感じることもあります。
笑えなかったり、逆に変な返事をしてしまい、関係が気まずくなることもあります。
「話がわからないけど笑ってやりすごそう」としてしまうことや、仲間外れのように感じることもあります。
聞き間違いや聞き逃しが多いと「この人はわかってない」と思われやすく、本当は気持ちを伝えたい場合にも、自信をなくして黙ってしまうこともあります。
「なんで聞いてくれないの?」と子どもを悲しませてしまうのではと心配になります。
本当は一緒に笑いたいのに、会話を避ける自分が悲しくなることもあります。
結果として内容を理解できず、後で不安になることも。
確認するのが怖くて、一人で悩んだり、「聞こえない自分が悪い」と自己嫌悪に陥ることもあります。
話す人の声が小さかったり、話題が飛び飛びになると理解が難しく、内容についていけないことも。
発言のタイミングがつかめず、参加しづらさを感じることもあります。
例えば、職場での早口での説明がわからない場合など、「もう一度ゆっくり話してほしい」とはなかなか言い出しづらいこともあります。
「気が利かない人」と思われるなど、つらい思いをすることもあります。
「○○さん、ちょっと来て!」という呼びかけに気づかず、重要な場面で対応が遅れてしまうことがあります。
信頼を失うのではと不安になります。
「質問ばかりして迷惑かも」と思い込み、我慢してしまうこともあります。
仲間外れのように感じ、居心地が悪くなることもあります。
「何を言っているの?」と何度も聞き返せず、ただ笑って座っているだけになることもあります。
部屋のドアをノックされても気づかず、無視していると思われることがあります。
(置き配が難しい場合)宅配便の到着に気づかず、不在票を何度も入れられてしまうことがあります。
再配達の手配が面倒になり、荷物を受け取るのが億劫になることもあります。
せっかく出かけても、コミュニケーションがつらくなったりすることもあります。
例えば、祭りやイベントなど人が多い場所では、近くの人の声もほとんど聞き取れず、会話を楽しむことをあきらめてしまいがちです。
「一緒にいても話せないな」と疎外感を感じます。
公共の情報から取り残されている感じがします。
車のクラクションや救急車のサイレンに気づかず危険な状況になる場合もあります。
何度も呼んでもらっていて申し訳ない気持ちになりますし、周りの視線が気になってしまいます。
ずっと耳を澄ませながら待っているだけで、とても神経がすり減ります。
「間違えたら恥ずかしい」と思うと動けなくなります。
結果的に順番が後回しになることもよくあります。
マスクをしたままの声はこもって聞こえにくく、重要な説明を理解できないことがあります。
薬局でも、「1日何回飲むか」「食後かどうか」を説明されても理解できないことがあります。
聞き返すのをためらってしまって、大事なことを確認できずじまいになることがあります。
聞き返すのが申し訳なく、買い物がストレスになることもあります。
「ポイントカードはありますか?」「袋はご利用ですか?」など尋ねられると、毎回緊張してしまいます。
後ろに人が並んでいると焦ってしまい、うまく受け答えができないこともあります。
店員さんに「これ、どこにありますか?」「この機能はどういうものですか?」と聞いても説明が聞き取れず、あきらめてしまうことがあります。
注文時に店員さんのオーダー確認が聞き取れず、注文ミスが起きることがあります。
美容師さんがカット中に何か話しかけてくれても、マスク越しの声でわからないまま頷いてしまうこともあります。
周りの動きに合わせてなんとか察することも多いです。
フードコートなどで「ブザーでお知らせします」が音だけだと、自分が注文した料理ができたことに気づかないこともあります。
おわりに
難聴があることで起こる困りごとは、本当にさまざまです。
日常の何気ない場面でも、聞こえにくさから不安や孤立感を抱えてしまうことがあります。
けれど、そのすべてが特別な配慮や高価な設備を必要とするわけではありません。
周囲の人が少しゆっくり話してくれたり、正面を向いて話しかけてくれたり、文字にして伝えてくれるだけで、安心できることがたくさんあります。
一方で、どれだけ工夫しても聞き取れない場面や、制度や仕組みが整っていないために、一人では解決できない課題も多く残っています。
「聞こえにくいことは、本人の努力や我慢でなんとかなるもの」と思われがちですが(医学モデル)、実際には社会の理解と環境づくりが必要です(社会モデル)。
私たちは、難聴のある方が安心して暮らし、学び、つながるために「文字通訳サービス」「リアルタイム字幕サービス」を提供しています。
会議や講座、イベントなど、リアルタイムで話を文字にしてお届けすることで、情報の取りこぼしを減らすお手伝いをしています。
また、難聴者向けに文字通訳のサポートがついた「オンライン手話教室クラスレッスン」の開催も検討しています。
手話を学ぶことを通じて、仲間と出会ったり、新しい世界にふれたりするきっかけをつくっていけたら嬉しいです。
このページを通じて、難聴のある人が感じている小さな困りごとや大きな不安に気づき、一人ひとりができることを考えていただけたらと思います。
そして、難聴のある人自身も「一人で抱え込まなくていいんだ」と思っていただけることを願っています。
私たちは、誰もが安心して暮らせる社会を一緒につくっていきたいと考えています。